読売新聞が平成30年間に人の心にどんな変化をもたらしたのかを振り返る「平成の人生案内」の記事が目にとまりました。タイトルは「老若男女 キレやすく~余裕なきルール厳格社会」。

“キレると言えば、若者を指すことが多かったが、次第に中高年にも目立つように。長寿に伴う老後への不安や働き続けることでのストレスが影響している。

<62歳男性。退職後関連会社に再就職。若手の横柄な態度が気になり、カッとなって発言してしまいます。文句ばかり言う人間とみられているようです>

岩波明・昭和大教授は「企業での法令順守の徹底など、社会全体がルールに厳格になった。人々は常にプレッシャーを感じ、他の人もきちんとしていないと許せなくなっている」”と結論づけていました。

しかし、そのような理由も多少はあると思いますが、昭和生まれと平成生まれとが育った社会環境の相違、とくに家庭や学校における教育や躾の差が大きいために、昭和生まれが平成生まれと会話を交わすと昭和生まれがキレてしまう大きな原因の一つであると思われます。

もちろん、昭和生まれの中にもキレやすい性格の人もいますが、平成生まれの大半は、いわゆる日本人としての道徳、倫理、常識やマナーなどをきちんと教え込まれてこなかったのが根底にあるのではというのが筆者の見解です。

楽天トラベルを通じて関西の一流温泉旅館に予約を入れ、宿泊したお客様(昭和生まれと推定される)の口コミコメント(というより苦情)のメール(一部省略)をご紹介したい。

・お車の駐車場の場所を説明するのに「あちら」ですでは分かりにくいです。
・貸し切り風呂について。「お風呂の時間は何時でも大丈夫です」と言われたので、こちらが時間を指定したら「その時間は空いていません」と言われ、何のために聞かれたのか分かりません。
・料理を出すときにおしぼりをお皿でどけるなどマナーが悪すぎます。
・食後の珈琲、紅茶が飲めないと言うと「別に他ので大丈夫です」と言われ、お客に対する言葉遣いとは思えませんでした。』

他人の側に立って考えたり、行動したりすることなど意識したことがなく、その上SNSだけがコミュニケーションの中心手段である平成生まれの若者の一端をこの苦情のメールから読み取ることができます。

とくに最後の部分の「別に他ので大丈夫です」と、彼らにとってはフツーに答えた積りなのに、なぜお客様は怒っているのか、本人はその理由を理解できないと推察されます。

しかしながら、彼らは企業にとっては金の卵であり、また日本の将来を担う大切な世代でもあります。
昭和生まれは彼らが育ってきた社会環境をよく理解し、多忙であっても根気よく懇切に指導・教育していかねば、日本の将来は衰退の一途をたどることになってしまうと憂いているのは私だけなのでしょうか?

なお、脳科学の観点からみると、脳の未発達な前頭前野がキレる人を生む大きな原因のひとつであるといわれています。

聖路加国際病院精神腫瘍科部長保坂隆氏によれば、脳の前頭前野という部位が物事全体を把握し、欲望や感情を抑える働きをしていて、腹が立つことがあっても、ここは大人の対応をしようというような判断をくだすのがこの部分。

そして、食欲や睡眠欲など動物的な本能を司る大脳辺縁系などが先に発達するのに比べて、脳の中でも最後に成長し、十代の終わりまで発達し続けるという。

したがって、子供のころ、我慢や抑制をせずに育つとこの部分の発達が弱くなるとのことです。
老若男女を問わず、子供のときの躾がいかに大切かを示唆しています。

さらに、この前頭前野の働きをスムーズに動かすための神経伝達物質がセロトニン。
疲労、ストレス、夜型生活、運動不足などで、セロトニン神経の働きが弱まってしまう。
パソコンやスマホが普及した現代社会ではセロトニンの働きを弱める要素が満ち溢れているのだそうです。

2019年(令和元年)6月1日
株式会社JAPAN・SIQ協会
代表取締役 金子 順一