7月上旬の九州豪雨で、最初に熊本県の球磨川が中流域の人吉市や球磨村を中心に氾濫し、残念ながら50人超の死者が出てしまいました。そのあと梅雨前線の線状降水帯は北上し筑後川流域が氾濫し、日田市、大牟田市、久留米市などでも甚大な水害が発生しました。

さらに、この梅雨前線は岐阜県の飛騨川流域の高山市、下呂市でも甚大な被害をもたらしました。このため今回の豪雨を「令和2年7月豪雨」と呼ぶようです。

球磨川の氾濫のちょうど2年前、西日本豪雨で岡山県倉敷市真備町の小田川が氾濫し、町の4分の1が水没し51名の死者が出た水害は、「2年経った西日本豪雨」としてメディアが取り上げましたので、記憶を新たにされた方も多いと思います。しかし、被災された住民の方々には申し訳ございませんが、球磨川も小田川も過去に同じような水害が繰り返されているのです。

球磨川の氾濫では、球磨村渡地区の特別養護老人ホーム「千寿園」で、濁流に飲み込まれ、残念ながら14人の命が奪われました。当直の職員が危険を感じ、65名の入所者を2階へ避難させましたが、入所者が車椅子か認知症のため時間を取られ、間に合わず1階に取り残された14名が犠牲になったようです。

私が疑問に思うのは、千寿園が濁流に飲み込まれた時間は7月4日早朝5時30分ころと推定されていますが、前日7月3日の午後7時30分には避難準備命令が出ているのです。恐らくまだ大丈夫と判断し行動に移さず、当日早朝3時30分にレベル4の避難指示が出された時点で避難を開始したのではと推測されます。

園長によれば年2回避難訓練をしていたと言っていますが、人間は危険が予測されても、自分は大丈夫と思い、なかなか行動を起こさないようで、いわゆる「避難スイッチ」を入れ行動に移すタイミングを予め決めておくことが重要であると識者は推奨しています。

県はこの地区を「水防上もっとも重要な区間」に指定し、かねてからその危険性を指摘していました。千寿園は球磨川に注ぐ支流のすぐそばに建っており、本流の球磨川が増水すれば 「バックウォーター現象(逆流)」が発生し浸水が起きる危険な場所であるとことは一目瞭然であると専門家は指摘しています。

また、今回の氾濫で球磨村の「村立渡小学校」及び熊本地震の際避難所に使われた「渡多目的集会施設」が水没しているのです。行政の危機意識の欠如も問題です。倉敷市真備町の場合も、昔から豪雨が降ると本流の高梁川から支流の小田川へ水が逆流して氾濫が起きていて、その原因がバックウオーター現象なのは明確なのです。

このため、小田川を合流点の手前で南下させ、高梁川の6キロ下流で合流させる計画が策定されていたにもかかわらず、国の予算が無いということで手付かずのまま放置されていたのです。

町史によると、近年だけでも小田川の氾濫による大規模な水害は1893年、1934年、1972年、1976年の4回にわたり、2年前と同様に町が水没しているのです。小規模の水害を含めると約10年に一度の割合で起こっている水害の常習地であり、石碑や伝承も多く残されているにもかかわらず、1999年井原鉄道が町を横断する形で開通すると、行政は倉敷市や総社市に隣接する真備町をベッドタウン化し被害を増大させたのです。人災と呼んでも差し支えないのではないでしょうか。

ただ、私が驚いたのは、こんな危険な水害常習地の住民の危機意識の低さです。災害後に行った山陽新聞のアンケートでは、「水害常習地と知っていたが、備えをしていなかった」人が68%、「知っておらず備えもしていなかった」が16%。両者を合わせると「備えをしていなかった人」が約85%に上ったのです。

地球温暖化のためか、日本列島は毎年、経験したことのないような豪雨に見舞われています。 ぜひハザードマップを活用して準備をしてください。

豪雨だけではありません。南海トラフ巨大地震の20年以内に発生する確率は50%。阪神淡路大震災当時の30年以内の発生確率が0.02~8.0%でしたから、南海トラフ地震の発生確率がいかに高いかお分かりいただけると思います。直下型地震はいつどこで起きてもおかしくありません。また、首都圏は富士山の噴火も考えておいたほうが良いと思います。

日本は災害列島であることを改めて認識し、企業、個人とも自然災害に対する備えを怠らないようにしていただければ幸いです。

令和2年(2020年)7月15日
株式会社JAPAN・SIQ協会
相談役 金子 順一