ここ数年、以前より夏は猛暑日が多くなった、冬が暖かくなった、台風が増えた、集中豪雨が多くなったなど、皆さんも実感されていらっしゃると思いますが、これは地球自体が暖かくなった、すなわち地球の温暖化が原因です。
地球温暖化とは、大気中にある二酸化炭素(CO2)やメタン、フロンなど温室効果ガスが増えすぎ、宇宙に逃げていた熱が地表にたまり、気温が上昇したり、地球全体の気候が変化することを指します。
こうした気候変動の影響を軽減するため、1988年にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が設立され、以降世界各国によって国際的な交渉が進められてきました。2015年にパリで開催された温室効果ガス削減に関する国際的枠組みを討議する「国連気候変動枠組条約国会議」で、通称「パリ協定」と呼ばれる合意が形成され、次のような長期目標を掲げました。
- 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて 2℃より低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
- そのため、できる限り早く 世界の温室効果ガス排出量を縮小させ、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
「パリ協定」での合意を受けて2018年にIPCCから「1.5℃特別報告書」が発表されました。報告書の執筆・編纂にあたったのは40ケ国 91人の科学者で、6,000を超える科学的研究を分析した予測です。
18世紀の産業革命以降、人間の経済活動によって温室効果ガスの排出が急激に増加。 産業革命以前(1850~1900年)の世界の平均気温に比べて、2006~2015年の10年間に観測された世界の推定平均気温は0.87℃上昇した。
そして、人間がこのまま経済活動を続けた場合、2030年から2052年の間に1.5℃に達する。 さらに2100年には4.0~4.8℃の気温上昇となり、その結果 世界各国に取り返しのつかない甚大な影響を及ぼす可能性があると予測しました。
そして、つい最近2021年8月9日発表された報告書では、温室効果ガスの排出量に応じて5つのシナリオを想定。各国が最善の温暖化対策を講じても2021~2040年には上昇幅は1.5℃になるという前倒しの見通しをしています。
もし対策を講じない場合、2080~2100年には上昇幅は4.4℃となり、熱波が頻繁に発生し、また北極海の海氷が溶けだし、1900年比で海面が約90センチ上昇するとしています。
今回の報告書はより精密な予測を行った結果、温暖化の脅威が切迫していることを明らかにし、各国に温室効果ガスの更なる削減努力を求めるとともに、温暖化については「人間の活動の影響は疑う余地はない」と断定。前回の報告書に比べて、より強い表現で危機感を表明しています。
一方、世界全体で2050年頃までに温室効果ガスの排出量をゼロ(カーボンニュートラル)にすれば、気温の上昇幅は縮小していくと予測しています。世界120か国がカーボンニュートラルを宣言、日本も昨年10月、菅首相がカーボンニュートラルの実現を宣言し、エネルギー政策の見直しを進めています。
おわりにIPCCとはどんな組織なのか?をご理解していただくために簡単な説明を付記いたしました。
IPCC(Integovernmental Panel on Climate Change/気候変動に関する政府間パネル)は、地球温暖化や気候変動に関する最新の科学的知見を評価する国連の組織です。人間活動を起源とする気候の変化、影響、適応および緩和についての方策を、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的に評価を行うことを目的として、1988年国連環境計画と世界気候機関とによって設立されました。そして同年の国連総会においてその活動が正式に承認されました。
2007年には気候変動問題に対する活動が評価されノーベル平和賞を受賞しています。政治的には中立な立場をとり、加盟国は日本を含め195か国、各国政府関係者のみならず多数の科学者がボランティアで参加しており、事務局はスイス・ジュネーブに置かれています。
今回のコラムではIPCCの報告書の解説に紙面を割きましたが、次回のコラムでは続編として、現在日本や世界ですでに起きている具体的な例およびこのまま温室効果ガスが排出された場合の具体的な予測についてお話ししたいと考えています。
2021年(令和3年)8月16日(五山の送り火)
株式会社JAPAN・SIQ協会
相談役 金子 順一