前回のコラムで説明したように、2018年のIPCCの報告書は、世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より低い1.5℃に抑える努力をすれば、将来の様々なリスクが軽減できるという予測を発表しました。

今回は2100年の日本の状況はどうなっているのかについてお話ししてまいります。

2019年環境庁が制作したビデオ「2100年 未来の天気予報」のシミュレーションによると2100年8月12日(土)の天気予報は、全国140の観測地点で40℃を超え「激暑」になるとの予報です。1.5℃未達成の気温と1.5℃達成の場合の主な都市における気温は下記のとおりです。

都市名 1.5℃未達成 1.5℃達成
熊谷 44.9℃ 41.6℃
名古屋 43.4℃ 40.1℃
東京 42.8℃ 39.5℃
京都 42.8℃ 39.2℃
福岡 37.5℃ 34.4℃
札幌 29.7℃ 26.0℃

 

2100年の夏に観測された主要都市の最高気温は次の通りです。

都市名 1.5℃未達成 1.5℃達成
東京 43.3℃ 40.0℃
名古屋 44.1℃ 40.8℃
大阪 42.7℃ 39.6℃
福岡 41.9℃ 38.8℃
札幌 40.5℃ 36.8℃

※現在 日本の歴代最高気温は2018年7月23日 熊谷と2020年8月17日 浜松で観測された41.1℃が最高記録です。

 

また全国13地点の年間平均猛暑日(35℃以上)は最近30年間(1991~2020年)の平均年間日数は2.5日。
統計開始の1910~1939年の30年間の0.8日と比べて3.1倍増加しています。2100年の日本各地の猛暑日の予想は下記のとおりです。

都市名 1.5℃未達成 1.5℃達成
京都 66日 40日
熊谷 63日 39日
名古屋 63日 37日
東京 60日 16日

※1.5℃未達成の場合、京都、熊谷、名古屋、東京では2か月間猛暑日が続くとの予想です。

 

このように猛暑日が続くと連日熱中症アラートが発令され、熱中症による死亡者の数は15,000人を超えると予測されています。さらに2100年の冬はどんな状況になるのか見てみますと、1.5℃未達成のケースでは2100年2月3日の主要都市の最高気温は下記のとおりです。

東京 26.0℃
名古屋 21.2℃
京都 25.2℃
福岡 23.4℃

※東京と京都では夏日となり、真冬でも半袖で過ごすことになります。雪が降らず雨となりスキー場がオープンできないのは想像がつくと思いますが、地域によっては桜が開花しない地方が出てきます。

 

また海水温が上昇するため、日本に接近、上陸する台風はスーパー台風と呼ばれる台風となります。スーパー台風の中心気圧は870ヘクトパスカル、最大瞬間風速は90メートル、大雨、暴風、高波、高潮などで通過地域は甚大な被害が予測されます。

因みにまだご記憶のことと思いますが、2018年9月4日に近畿地方を襲った台風21号。
高潮で関西空港が浸水、多数のコンテナが海に流され、加えて強風で流されたタンカーが空港連絡橋に激突し橋が破損、利用者など6,000名がターミナルビルに閉じ込められたあの台風です。

この台風の最大瞬間風速は関空島で58.1メートル、上陸地点の徳島で観測された中心気圧は925ヘクトパスカルですので2100年に日本を襲うスーパー台風がいかに強烈であるかご理解いただけると思います。

今夏の日本は、8月だというのに日本上空の同じところに梅雨前線が停滞し、各地に大雨を降らせ、水害や土砂崩れの災害が発生しました。また8月8日に岐阜県多治見市で 最高気温40.6℃を記録しましたが、既に気候変動が始まっているという実感は無いのではと推察いたしますが、世界の各地では異常気象が頻発しているのです。

次回のコラムでは世界の各地で起きている異常気象の数々をご紹介したいと考えております。

2021年(令和3年)9月6日
株式会社JAPAN・SIQ協会
相談役 金子 順一